あたしとあなたの閨房哲学
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「我、傷口にして刃。生贄にして刑吏」
(ボードレール「我と我が身を罰するもの」)
こんばんは✨シズカです🤗
本日も一緒に過ごして下さった皆さん、ありがとうございました💕
本日6月2日は、かのマルキ・ド・サドの誕生日。せっかくなので、サドに因んだお題日記でも書きますか。
✒️お題:Sですか?Mですか?
SかMかは、2つに分けられるものではないし、強いて分けるなら4つに分けたほうが理解しやすいです。
SMは、2進法ではなく、4進法で見ると解像度が高くなりますよ。
加虐趣味・被虐趣味を「サディズム・マゾヒズム」と名付けて定義づけた、ドイツの精神医学者クラフトエビングは「サディズムとマゾヒズムは精神構造としては同質である」とし、精神分析学の始祖フロイトは「人間は本能的にサディズムを備えており、マゾヒズムは、サディスティックな欲望の対象を他人から自分にすり変えたもの。マゾヒストもまた、自分自身に対するサディストである」としています。
人間の胎児は皆、はじめは女性器を携えた姿から始まり、それが妊娠8~9週に入る頃に、染色体の働きによって、女性器・男性器に分化していきます。
サドマゾヒズムも同様。人間にはサディズムがまず先に備わっており、その矛先が自己へむかうか、他者に向かうかの違いによってSかMかが語られる、と言うことですね。
枝葉の伸びる先が違うだけで、根と幹を同じくするもの、なのであります。
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サディズムとマゾヒズムの多重構造についての秀逸な分類に「SMのマトリクス」というものがあります。
ここでは、SとMは4種類に分類されます。
♥️支配M
自分がしたいプレイありき。自分のしてほしいことをしてくれる主人を求める。
マゾヒズムの主軸が自分にある。
💜服従M
服従に価すると自分が認めた女王様・御主人様ありき。主人のしたいことのために自分がある。
♥️支配S
自分の性癖を満たす為にMに奉仕させる。
💜服従S
Mの性癖を満たす為にMに奉仕する。
支配Mは「縛られたい」「言葉責めされたい」と言うように、自分の性癖を満たすことが目的です。「SはサービスのS」と言われるほうのSは服従Sだと言えますね。プレイを支配するのはMの性癖で、Sはそれを満たすために御奉仕するのですから、実質、どちらが奴隷なのか?という感じですね。
支配Sも、ただ自分の好き放題に性癖をぶつければ良いのではなく、奴隷から主人に選ばれるに値する人格、自己鍛練が必要とされます。古代ローマ貴族マルクス・シドニウス・ファルクスの著した奴隷の使役方法指南書の序文が「主人であれ」なんですね。ここで言う奴隷とは、SMプレイにおける性奴隷ではなく、家庭内労働に用いる使用人としての奴隷ではありますが、何にせよ、奴隷を持つにはまず、主君としてふさわしい人格、教養、管理能力が自分に問われる、ということです。
SM文学の最高峰、谷崎潤一郎「春琴抄」の下男の佐助は主人であり師匠である春琴を神格化し、公私ともにひたすら尽くします。佐助は冷え症の春琴の足を胸に抱いて寝てやるのですが、ある時、熱を持って痛む虫歯を冷やすのに、つい、主人の冷たい足に頬を寄せてしまいます。春琴は「主人の体を、自分の頬を冷やすために使うなんて何事か」と、虫歯のうずく頬を蹴りあげるのですが、春琴が支配Sで、佐助が服従Mという関係性がよくわかる名シーンです。
服従Mはいわば、自分のご主人様以外には懐かない犬、です。「監獄学園」の芽衣子ちゃんはこれ。「ご主人様の言うことだから聞く」という所に従属の美が生まれるわけですから、主人以外には、ドSだったりします。
同じく「監獄学園」のM男アンドレは、自分の求めるプレイを施してくれるSを女王様と認定する、未熟な女王様には自分好みの責めができる人材に育てる逆調教を行う。これはプレイの優先順位が「自分のマゾ欲を満たすこと」なので、アンドレは支配Mです。
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表面だけ見て「あなたS、わたしMだから合いそう!」と思っても、支配S×支配Mではプレイを深めていくうちに主導権の取り合いが生じるでしょう。
「自分はMのはずだけど、M役をしていてもいまいち楽しめない」というなら、S×Mの型は噛み合っていても、支配×服従の型が噛み合ってない可能性があるでしょう。
SMマトリクス分類の論点は、どちらがより、真性のSかMか?ということではありません。それは「クリームパンとカレーパン、どっちが美味しい?」的なナンセンスな問いです。ただ、自分の属性が何か知ることで、性癖のマッチングはしやすくなるのでは?とは思います。
物理的快楽が満たされるか?のプレイスタイルありきなのか、精神的な支配関係ありきのSMを求めるのか、が一つのポイントですね。
まず、自分が4分類のうち、どれに該当するかを把握することが、充実したSMライフへの第一歩ではないでしょうか。
「あなた方は薔薇を見れば美しいと仰言り、蛇を見れば気味がわるいと仰言る。
あなた方は御存知ないんです。薔薇と蛇が親しい友達で、夜になれば お互いに姿を変え、蛇が頬を赤らめ、薔薇が鱗を光らす世界を。
兎を見れば愛らしいと仰言り、 獅子を見れば怖ろしいと仰言る。
御存知ないんです。嵐の夜には、かれらがどんなに血を流して愛し合うかを」
(三島由紀夫「サド侯爵夫人」)
(ボードレール「我と我が身を罰するもの」)
こんばんは✨シズカです🤗
本日も一緒に過ごして下さった皆さん、ありがとうございました💕
本日6月2日は、かのマルキ・ド・サドの誕生日。せっかくなので、サドに因んだお題日記でも書きますか。
✒️お題:Sですか?Mですか?
SかMかは、2つに分けられるものではないし、強いて分けるなら4つに分けたほうが理解しやすいです。
SMは、2進法ではなく、4進法で見ると解像度が高くなりますよ。
加虐趣味・被虐趣味を「サディズム・マゾヒズム」と名付けて定義づけた、ドイツの精神医学者クラフトエビングは「サディズムとマゾヒズムは精神構造としては同質である」とし、精神分析学の始祖フロイトは「人間は本能的にサディズムを備えており、マゾヒズムは、サディスティックな欲望の対象を他人から自分にすり変えたもの。マゾヒストもまた、自分自身に対するサディストである」としています。
人間の胎児は皆、はじめは女性器を携えた姿から始まり、それが妊娠8~9週に入る頃に、染色体の働きによって、女性器・男性器に分化していきます。
サドマゾヒズムも同様。人間にはサディズムがまず先に備わっており、その矛先が自己へむかうか、他者に向かうかの違いによってSかMかが語られる、と言うことですね。
枝葉の伸びる先が違うだけで、根と幹を同じくするもの、なのであります。
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サディズムとマゾヒズムの多重構造についての秀逸な分類に「SMのマトリクス」というものがあります。
ここでは、SとMは4種類に分類されます。
♥️支配M
自分がしたいプレイありき。自分のしてほしいことをしてくれる主人を求める。
マゾヒズムの主軸が自分にある。
💜服従M
服従に価すると自分が認めた女王様・御主人様ありき。主人のしたいことのために自分がある。
♥️支配S
自分の性癖を満たす為にMに奉仕させる。
💜服従S
Mの性癖を満たす為にMに奉仕する。
支配Mは「縛られたい」「言葉責めされたい」と言うように、自分の性癖を満たすことが目的です。「SはサービスのS」と言われるほうのSは服従Sだと言えますね。プレイを支配するのはMの性癖で、Sはそれを満たすために御奉仕するのですから、実質、どちらが奴隷なのか?という感じですね。
支配Sも、ただ自分の好き放題に性癖をぶつければ良いのではなく、奴隷から主人に選ばれるに値する人格、自己鍛練が必要とされます。古代ローマ貴族マルクス・シドニウス・ファルクスの著した奴隷の使役方法指南書の序文が「主人であれ」なんですね。ここで言う奴隷とは、SMプレイにおける性奴隷ではなく、家庭内労働に用いる使用人としての奴隷ではありますが、何にせよ、奴隷を持つにはまず、主君としてふさわしい人格、教養、管理能力が自分に問われる、ということです。
SM文学の最高峰、谷崎潤一郎「春琴抄」の下男の佐助は主人であり師匠である春琴を神格化し、公私ともにひたすら尽くします。佐助は冷え症の春琴の足を胸に抱いて寝てやるのですが、ある時、熱を持って痛む虫歯を冷やすのに、つい、主人の冷たい足に頬を寄せてしまいます。春琴は「主人の体を、自分の頬を冷やすために使うなんて何事か」と、虫歯のうずく頬を蹴りあげるのですが、春琴が支配Sで、佐助が服従Mという関係性がよくわかる名シーンです。
服従Mはいわば、自分のご主人様以外には懐かない犬、です。「監獄学園」の芽衣子ちゃんはこれ。「ご主人様の言うことだから聞く」という所に従属の美が生まれるわけですから、主人以外には、ドSだったりします。
同じく「監獄学園」のM男アンドレは、自分の求めるプレイを施してくれるSを女王様と認定する、未熟な女王様には自分好みの責めができる人材に育てる逆調教を行う。これはプレイの優先順位が「自分のマゾ欲を満たすこと」なので、アンドレは支配Mです。
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表面だけ見て「あなたS、わたしMだから合いそう!」と思っても、支配S×支配Mではプレイを深めていくうちに主導権の取り合いが生じるでしょう。
「自分はMのはずだけど、M役をしていてもいまいち楽しめない」というなら、S×Mの型は噛み合っていても、支配×服従の型が噛み合ってない可能性があるでしょう。
SMマトリクス分類の論点は、どちらがより、真性のSかMか?ということではありません。それは「クリームパンとカレーパン、どっちが美味しい?」的なナンセンスな問いです。ただ、自分の属性が何か知ることで、性癖のマッチングはしやすくなるのでは?とは思います。
物理的快楽が満たされるか?のプレイスタイルありきなのか、精神的な支配関係ありきのSMを求めるのか、が一つのポイントですね。
まず、自分が4分類のうち、どれに該当するかを把握することが、充実したSMライフへの第一歩ではないでしょうか。
「あなた方は薔薇を見れば美しいと仰言り、蛇を見れば気味がわるいと仰言る。
あなた方は御存知ないんです。薔薇と蛇が親しい友達で、夜になれば お互いに姿を変え、蛇が頬を赤らめ、薔薇が鱗を光らす世界を。
兎を見れば愛らしいと仰言り、 獅子を見れば怖ろしいと仰言る。
御存知ないんです。嵐の夜には、かれらがどんなに血を流して愛し合うかを」
(三島由紀夫「サド侯爵夫人」)