熱が冷める前に辛さで満たす夜

ホテルの部屋を出たあと、
夜風がやけに冷たくて、少しだけ心がざわついた。
触れた指先の温度がまだ残っているのに、
その余熱だけが静かに私を包む。
気づけば、繁華街の路地。
赤い提灯の下から、ふわっと香るスパイス。
「……あ、麻辣湯だ」
辛さに強くないくせに、
こんな夜は、あえて刺激が欲しくなる。
春雨、豆腐、肉団子、キクラゲ、白菜。
自分で選ぶその作業さえもひとりの儀式みたいで。
スープをひと口。
舌が痺れて、胸が熱くなって、
その瞬間だけは、何も考えずにいられる。
――恋のあとに残るのは、
甘さでも後悔でもなく、ただ「静かな辛さ」。
それをゆっくり、ひとりで味わう夜。
孤独の麻辣湯。
でも、悪くない。
寧ろこういう時間があるから
次の季節が来る頃には人肌が恋しくなるんだと思う。
スパイスという名の刺激が欲しくなったら是非
孤独のグルメ激アツ過ぎて東京戻ったら、おでんか町中華行く
では本日もよろしくお願いいたします